「日誌撰集」

□「私的芸術論」
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本宮ひろ志先生は,ネームを見せて開口一番こう尋ねた「これ売れると思うか?」と。
「面白いか」でも「なにか感じるか」でもない,ただ「売れるか」どうかを先生は訊いてきた。テーマ性とか作者のメッセージ云々にこだわっていた純朴な漫画青年にはきつい洗礼だった。
――江川達也『“全身漫画”家』

1 好み

 「個性」とか「独創性」という言葉が余り好きではありません。

 元々耳障りのよい言葉が嫌いなのです。
 世の中そんなに上手く行くわけではなく,耳障りのよい言葉を述べる人も,まったくそのとおりに生きているはずもなく,したがって,どこかにごまかしがあるような感じがするからです。
 
 「個性」や「独創性」もプラスイメージの言葉として使われます。
 濫用されており,そのため,語義に反して余りにも凡庸な事柄に対して使われ過ぎています。

 「○○さんは個性的である。」あるいは「○○は独創的な作品である。」などと言われることもありますが,実際に接してみると,どうもそう感じないことの方が多いのではないでしょうか。
 一見奇異には映るものの,やはり,以前にもどこかで見たような感じがして,どこかしら凡庸です。
 賛辞の言葉として安易に使われているのです。
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